もともとめまいを訴える人は女性の方が多く、更年期になるとさらにその数が増えます。
めまいがあるからといって生死にかかわるわけではありませんが、不快な症状であることには変わりありません。
それに、まれに怖い病気が潜んでいることもあります。今回はめまいについて詳しく紹介します。
めまいは大きく3つのタイプに分けられる!更年期に多いのは?
「めまい」とひと言で言っても、そのあらわれ方にはいくつかタイプがあります。まずひとつずつ見ていきましょう。
グルグル回る回転性めまい
自分や周りが回転しているような感じがするめまいです。ひどいときは吐き気がしたり嘔吐してしまうこともあります。立っていられなくなり、しゃがみこんでしまうことも。
内耳炎やメニエール病、良性発作性頭位めまい症、突発性難聴が要因となっていると起こりやすいタイプです。
体がふわふわ浮いているような非回転性めまい
体がゆらゆら揺れているようなかんじ、またはふわふわ浮いているような感じがするめまいです。更年期にもっとも多いのがこの非回転性めまいです。
内耳の異常のほか脳の障害が原因で起こることもあります。また、メニエール病や突発性難聴、内耳炎の慢性期で現れます。症状が長引く傾向の強いタイプです。
立ちくらみ
立ち上がったときに一瞬目の前が真っ暗になる症状。仮性めまいともいいます。
耳や脳に原因があることは少なく、高血圧や低血圧などの全身性の病気や、過労やストレス、自律神経の乱れによって起こります。
思春期によくみられる症状で、立ったり座ったりして姿勢を変えるたびに血流を全身にバランス良く配分させることができず、脳が血流不足になるからです。
これも自律神経の働きが未熟なために起こる症状です。最近では大人でも増えています。
めまいの原因となる体の部位は?更年期に多いのは自律神経の乱れ
めまいは体のバランスをとる機能が不安定になることで起こります。体のバランスをとる機能を平衡機能といいますが、これを調整しているのが平衡感覚・視覚・深部感覚です。
「深部感覚」は筋肉や関節など情報を脳に伝える役目をしています。
「平衡感覚」は体の部位でいうと、内耳にある三半規管・耳石器・前庭神経、大脳と脊髄をつなぐ脳幹・小脳があげられます。このどこかに障害が起きるとめまいが生じるのです。
障害が生じた部位によってめまいを分類すると3つに分けられます。
- 耳が原因のめまい
- 脳が原因のめまい
- 脳の指令を伝えるホルモンの異常や自律神経失調症状
めまいと聞くと、脳に何かしらの異常があるのでは?と不安になる人も多いと思いますが、実は約7割が耳から生じます。脳が原因の場合は約1割です。
女性に多いメニエール病とは?放っておくと聞こえづらくなる?
めまいの症状があると、メニエール病では⁉と思いつく人も多いのでは?
男性より女性に多く、特に最近は30歳代から40歳代前半の女性に多いのでプレ更年期は注意が必要です。
メニエール病の症状は?
自分自身や周囲がぐるぐる回っているような回転性のめまいが何回も繰り返されます。一度の発作は20~30分から半日ほど続き、次第に収まります。
めまいと同時に耳鳴りや耳が詰まった感じ(耳閉感)や低音域が聴き辛くなるなど聴覚の症状を伴うのが特徴です。
動悸・吐き気・嘔吐があることもあります。
発作の頻度は個人差があり、1日に何度もある人もいれば、週に一度あるいは数ヶ月、1年に一度と頻度の少ない人もいます。
発症のメカニズムは?
メニエール病は内耳の病気です。内耳にある三半規管や耳石・蝸牛は筒状になっていて内部は内リンパ液で満たされています。
それが何かしらの原因でパンパンにふくらんで三半規管や耳石を圧迫してめまいを生じます。また、蝸牛が圧迫されると耳鳴りや耳閉感、難聴が起きます。
ストレスが原因?
なぜ水分を貯め込んでしまうのか、はっきりしたことはわかっていません。ただ、ストレスが原因だという見方が強く、別名ストレス病とも呼ばれています。
女性のライフステージの中でも更年期はストレスの多い世代です。発症要因は揃っているといえますね。
メニエール病は生死に関わる病気ではありませんが、発作を繰り返していると聴力が低下していくケースもあります。適切な治療を行うことで防ぐことができます。
更年期以降に多い「良性発作性頭位めまい症」って何?
良性発作性頭位めまい症はめまいの原因の中でも特に多い病気です。内耳が原因のめまいの中でもっとも多く6割から7割を占めています。
良性発作性頭位めまい症の症状は?
頭を特定の位置にするとめまいが起きます。めまいを起こす頭の位置を「めまい頭位」といいますが、その位置は人によってさまざまです。例えば、
- 朝布団から起き上がったとき
- 寝返りをうったとき
- 洗濯物を干そうとして上を向いたとき
- 急に振り向いたとき
など、同じ動作をしたときにめまいが生じるのが特徴です。めまい頭位にしたらすぐに症状があらわれますが、比較的短い時間で治ります。
回転性のめまいの場合と、ふわふわする非回転性の場合両方がありますが、回転性の場合は吐き気や嘔吐を伴うときもあります。
耳鳴りや耳閉感・難聴などの耳の異常や手足のしびれはありません。
発症のメカニズムを知れば安心
内耳にある耳石器には、耳石という小さな石があって体を傾けるとこの耳石が移動します。これを感覚細胞がキャッチして「傾いているよー」と脳に情報を送ります。
耳石の主成分は炭酸カルシウムで骨と同じです。衝撃や老化で剥がれ落ちてしまうことがあります。剥がれ落ちた耳石が三半規管の中に入り込んでしまったのが良性発作性頭位めまい症です。
三半規管の内部はリンパ液が満たされていて、頭や体が動くと内部のリンパ液が流れ始めます。それを感覚細胞がとらえます。
良性発作性頭位めまい症では、頭を動かすと剥がれ落ちた耳石が三半規管の中で移動します。体の動きが止まっても、耳石は転がり続けているわけです。
ところが、視覚や他の運動器(筋肉など)からは静止しているという情報が脳に送られています。この情報のズレがめまいを引き起こすのです。
更年期以降の女性に多い理由
上記のように良性発作性頭位めまい症は、耳石が剥がれ落ちたことが原因です。
頭を強打したときや慢性中耳炎だった人にも発症しやすい病気ですが、50~60歳以降の女性に多く発症するめまいです。
その理由は、耳石は骨と同じ炭酸カルシウムが主成分なので、エストロゲンの減少による骨粗しょう症も要因となるからです。
剥がれ落ちた耳石が三半規管にたまったまま固まってしまうと症状が起きやすくなります。このめまいの改善法は、三半規管から剥がれ落ちた耳石を除去することです。
耳石は小さな粒なので頭を動かしていると自然に砕かれていきます。砕かれた耳石の粒は耳石管の奥のほうで吸収されます。
適度に体を動かしていないと、たまっていく一方になってしまいます。更年期以降の女性に発症率が高いのも、骨粗しょう症に運動不足が加わっているといわれています。
良性発作性頭位めまい症についてはこちらの記事も参考にしてください。
更年期障害の「めまい」は自律神経の乱れが原因
更年期のめまいは、耳や脳など他の病気がないのに起こる場合は自律神経の乱れによるものです。
更年期になると卵巣から分泌される女性ホルモンが急激に減少します。そうなると同じ中枢を持つ自律神経にも乱れが生じ、さまざまな症状を引き起こします。
ほてりやのぼせ、動悸、イライラや抑うつ感がよく聞かれる症状ですが、めまいもそのひとつです。
めまいの原因が更年期障害であれば、次第に症状が治まっていくので心配ありません。
ストレスをためないことが予防になる
更年期の症状全般に言えることですが、ストレスが症状を引き起こしたり悪化の原因になります。
50歳前後は仕事でも忙しい時期であり、家庭でもまだまだゆっくりしていられない環境ですね。そろそろ老後のことも心配になってくるし、親の介護問題が持ち上がってくる人もいる年代です。
いくつものストレスが重なることで、自律神経に乱れが生じやすくなっています。ストレスをためないことがめまいなど更年期症状を発症または重症化させない秘訣です。
こんな「めまい」は要注意!医療機関へ行きましょう!
めまいはつらい症状です。急に景色がグルグル回って見えたり、ふらついて立っていられないほどです。
多くのめまいはすぐに生命に危険を及ぼすものではないのですが、中には放っておくと危険なものもあります。
脳の異常が原因のめまいは要注意!
脳貧血とも言われる立ちくらみを別にして、めまいの約6割が回転性のめまいで、このタイプはほとんどが内耳の異常によるもので、生命の心配がないものです。
反対に、非回転性のめまいの中には中枢性のめまいがあります。
めまいと一緒に意識を失ったりふるえやしびれ、体の麻痺など神経症状がある場合はすぐに救急車を呼んで受診してください。脳出血や脳梗塞などが原因のこともあります。
ただし、回転性のめまいであっても小脳や脳幹の出血によるものがあります。これも他の神経症状があった場合は注意してください。
- ろれつが回らない
- 手足がしびれる・震える
- 手足をスムーズに動かせない
- 声がしわがれる
- 物が二重に見える
- 意識が薄れる
- 経験したことのない激しいめまいで頭痛・吐き気がある
めまいが起きたら慌てないで!まずは安静
めまいが起きてしまったら、安静にして症状が治まるのを待ちましょう。横になることができればベストです。
- 楽になる姿勢で安静に
- 音に敏感になるので静かな環境で
- 部屋は薄暗くして光が入らないようにする
これまで説明したように、めまいは中枢神経の異常の場合をのぞき、命にかかわるものではありません。確率的にはめまいのうち1割程度が危険なめまいといいます。
とはいっても症状はつらいですね。あわてたり不安になってしまうかと思いますが、そのストレスや不安感が症状を悪化させることにもつながります。
めまいの発作がある人は、一度専門医に診てもらって病気の有無を検査すると安心です。
めまい専門医はまだ数が少ないのですが、リストがありますので参考にして下さい。
日本めまい平衡学会専門医リスト
病院ナビ-めまいの専門治療が可能な病院
めまいが更年期の症状であれば、それほど心配する必要はないので日常生活に注意するなどして上手に乗り切りましょう。
ただ、症状が重く日常生活にも支障があるときは医療機関で相談することをおすすめします。
更年期のめまいの治療は抗めまい薬や漢方薬、ストレスが大きな要因であるときはカウンセリングや精神安定剤、自律神経調整剤などを用います。

まとめ
何かとストレスの多い現代人、めまいや耳鳴りといった症状は誰にでも起こる現代病ともいえます。さらに更年期になると自律神経の乱れからめまいは起こりやすくなります。
めまいが起きたらまず安静にしてください。更年期症状としてのめまいはその時期を過ぎたら自然に軽減していきます。
ただ、メニエール病など他の病気が原因となっていることもあるので、あまり頻繁に起こる場合は診察を受けることをおすすめします。
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