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カテゴリー:更年期障害の治療とHRT(ホルモン補充療法)

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HRTをするときに必要な検査と更年期以降受けたい検診について

更年期障害の治療とHRT(ホルモン補充療法)

HRT(ホルモン補充療法)は、薬を使った更年期障害の治療です。今回はHTRを受ける上での必要な検査について紹介します。

 

 

その不調本当に更年期障害?専門家の力が必要な理由

 

50代にさしかかる頃、なんとなく体調がすぐれない、頭痛や肩こりが酷い、疲れがとれないといった不調を感じると、「もしかして更年期?」と思う人も多いですね。

 

ホットフラッシュや生理不順などがあれば大抵の女性は「来たか!」と感じるはずです。

 

でも、腰痛や関節痛が酷いときは整形外科に、頭痛や便秘、下痢の悩みなら内科、ドライアイが気になれば眼科・・・といった風にさまざまな診療科に行っては異常なしといわれた経験を持つ人が多いのも事実です。

 

40代になって不調が出たら婦人科へ!

 

更年期の症状はそれこそ全身に及ぶといっても良いほどです。動悸が酷ければ心臓病を疑うし耳鳴りも多い症状なので耳鼻科系の疾患ではないかと思うのも仕方ありません。

 

ただ、40代で何かしら不調を感じたらまずは婦人科を受診しましょう。

 

更年期障害かどうかの診断をする目的は?

 

婦人科ではまず訴えている症状が更年期によるものかどうかを判断します。診断は問診・内診・検査を総合的に見て判断します。

 

その理由は、更年期症状かどうかの判断の目的のひとつが、他の病気が原因になっていないことを確認することにあるからです。

 

例えば、甲状腺機能低下症でもだるさや倦怠感を訴えることがあり、その場合は治療内容も診療科も別になります。そういった基礎疾患を除外していくためにも各種必要な検査を行います。

 

更年期障害の検査と治療の流れは?

 

まず、婦人科では更年期の治療に入る前に行う検査があります。初診では問診を中心に患者の症状を把握し、内診や検査をします。検査結果が出るまでの間、症状に応じて薬が処方されることもあります。

 

問診はとても重要!正直になんでも伝えましょう

 

多くの病院では、受付のときに問診表を渡されます。月経期間や周期など月経については必須項目です。その他既往病歴、服用中の薬など記入する項目は少なくありません。

 

その場になって慌てないように、あらかじめメモを作っておきましょう。抑えておきたいポイントです。

 

  • 最終月経
  • 月経周期
  • かかったことのある病気
  • 服用中の薬
  • 家族の病歴(乳がん・子宮がん・高血圧・糖尿病など)
  • 今一番つらい症状
  • 症状の始まったのはいつでどんな状態か

 

内診で子宮や卵巣の状態をチェック

 

初診時に内診を行い、膣の様子や子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣脳腫などの有無をみます。このときに子宮ガン検査のために細胞診を行うのが一般的です。

 

HRTを受ける際には必須の検査でもあります。

 

婦人科の内診を苦手とする人は多いですが、緊張すると体に力が入ってかえって痛みを感じたり診察しにくくなります。まずはリラックス!深呼吸をしてお腹の緊張をとりましょう。

 

ホルモン量・健康状態をみる一般血液検査

血液検査では必要に応じていくつかチェックする項目があります。

 

女性ホルモン量の測定

 

血液中のエストロゲンが減少して卵胞刺激ホルモンが増加していれば更年期と診断されます。具体的には血液中のE2・LH・FSHの3つのホルモンの濃度で判断されます。

  • E2-エストラジオール
  • LH-黄体化ホルモン
  • FSH-卵胞刺激ホルモン

 

40歳代になると卵巣機能がだんだん低下してきて無排卵月経が多くなります。そのとき、卵巣を刺激するFSHが、遅れてLHが上昇します。

 

そのためしばらくはE2は減少しませんが、卵巣の機能がさらに低下するといくら刺激を受けてもE2の量は下がっていきます。

 
甲状腺ホルモンのチェック
 

甲状腺の病気は20代から50代の女性に多くみられる疾患です。特にバセドウ病橋本病はよく知られていますね。

 

このふたつは同じ甲状腺の機能異常から起こりますが、バセドウ病は甲状腺機能亢進症、橋本病は甲状腺機能低下症です。

 

バセドウ病の症状

倦怠感・無気力感・汗をかく・イライラする・頻尿・不眠・口が渇くなど

 
橋本病の症状

便秘・皮膚の乾燥・声のかすれ・無気力・だるさがとれない・記憶力の低下など

 

症状も更年期のそれとよく似ているので注意が必要なのですね。

 
生活習慣病のチェック

 

更年期以降は生活習慣病のリスクが上がります。これは女性の骨や血管を丈夫に保ってきたエストロゲンの恩恵がなくなってしまうからです。

 

血液一般検査ではコレステロール値や肝機能をチェックします。

 

エストロゲンの恩恵がなくなる更年期以降に必要な検査

 
骨量(骨密度)の検査

閉経を迎えた女性にとって骨粗しょう症は宿命ともいえる疾患です。

 

エストロゲンには骨量を強く保つ働きがあるっことが分かっています。エストロゲンの分泌がごくわずかになるポスト更年期は骨の健康をいかに保つかが大事になってきます。

 

骨量を測定する検査は更年期を迎えた女性にはぜひ受けてもらいたい検査のひとつです。

 

自覚症状のある更年期障害が改善されても、骨粗しょう症のリスクが高い場合はHRTの継続も治療の目的のひとつになるからです。

 

 

HRTを視野に入れる場合は必須の乳がん検査

 

乳がんは30代後半から増え始め、40代後半から50代前半にピークを迎えます。まさに更年期を襲う病気ですね。

 

以前は日本人は閉経前が多かったのですが、最近は閉経後の60歳代前半にも増えています。 また、HRTは乳がんリスクが完全に解消されたわけではありません。

 

治療を視野に入れている場合には必ず受ける検査です。もちろん、HRT継続中にも定期的に検査が必要になります。

 

 

乳がんにかかる若い人が増えている?

 

乳がんについて近年いろいろな情報が錯綜していますので、少しまとめてみます。

 

まず、若い人と年配者では乳がん検診に対するリスクとベネフィットが明らかに違うという事実があります。

 

ご存知の通り、日本人の乳がん罹患率は上昇しています。ドラマにもなった「余命一ヶ月の花嫁」やフリーアナウンサーの小林真央さんが若くして乳がんで命を落としていることもあって、若い人の乳がんが増えていると思っている人も多いのでは?

 

結論を言うと、かかっている人は増えているけれど、全体の比率はそれほど変わらないということです。

 

もともと乳がんは先ほど書いたように、まさに更年期世代に発症する人が多い疾患です。30代以下の罹患率はわずか6%程度で推移しています。

 

さらに、推奨されているマンモグラフィーによる画像診断は、乳腺の発達している若い世代にはリスクがベネフィットを上回るという専門家が少なくないのです。

 

ただ、更年期世代は特に注意して欲しい疾患であることに変わりはありません。授乳経験のある人であればなおさらマンモグラフィーの有効性は高いので、HRTを受けない人でも国の推奨する2年に1度程度は受けるとよいでしょう。

 

 

乳がん検診は何科で受けるのがよいか

 

さて、乳がん検診を何科で受けるのが良いかですが、ずばり乳腺外科などの専門家です。 婦人科でも触診や視診は行いますが、専門の技師や医師による検診が安心です。

 

最近は人員や設備の整った婦人科も増えていますので、通院可能なエリアをチェックしてみてくださいね。

 

更年期治療の初診から再診、治療開始までのおおまかな流れ

 

検査項目を個別に紹介してきましたが、おおまかな流れをまとめました。

 

初診時にすでに閉経を迎えていてエストロゲンの低下が明確なときは血中のホルモン検査は行いません。

 

また、やはり閉経を迎えていて症状がきつくてつらいときは、女性ホルモンを投与して様子をみることもあります。

 

更年期障害の診断は総合的に判断!特徴的な症状が決め手にも?

 

更年期障害の診断が出るまでには、想像したより多くの検査が必要になると感じたでしょうか?更年期の症状だと確定させるためには、その他の原因を除いていくことも重要な判断材料になります。

 

さらに、骨量や脂質代謝などは更年期の診断のためというだけでなく、更年期以降の健康を見据えた女性のトータルヘルスにも必要です。最近の更年期治療の目的は、症状を改善することだけでなく、老年期のQOLを考えているのですね。

 

医師が判断材料とする目安には、検査で出てくる数値だけでなく、更年期であること(40代後半)とほてりやのぼせ、発汗が症状の大半を占める場合は、更年期障害が濃厚だと考えます。

 

治療方法は本人の意思を重視することが基本

 

問診・視診・各種検査結果から更年期の症状と診断されると、具体的な治療についての方向を決めて行きます。

 

治療方針は医師の十分な説明のもと、患者本人が納得して行っていくことが大切です。

 

特に、HRTを希望する場合は薬による副作用とリスクを含めて、医師から丁寧な説明を受けるようにしましょう。疑問に思う点があれば遠慮なく質問し、信頼関係を築いてください。

 

HRTの治療中は定期健診を受けましょう

 

更年期障害と診断されても、だれでもHRTが受けられるわけではありません。HRTが受けられない人もいますし、慎重に行う必要のある人もいます。

 

治療を始める前にも全身の詳しい検査は行いますが、治療中も定期的に検診が必要になります。検査の目的は副作用のチェックとともに、更年期以降の健康管理のためです。

 

診察ごとに受ける問診と診察

 

問診で薬の効果をみたり、副作用の有無をチェックして必要であれば薬を調整していきます。

 

半年ごとに受ける検査
 
  • 体重、身長測定
  • 内診と超音波検査で子宮内のチェック
  • 血液検査で肝機能や腎機能、血中の脂質など
  • 骨量測定
  • 乳がん検診(触診)
  • 必要に応じて子宮体がん検査

 

1年ごとに受ける検査
 
  • 一般血液検査、尿検査
  • 子宮体がん、子宮頸がん検査
  • 乳がん検診(超音波検査やマンモグラフィなどの精密検査)

これらの検査は病院によって多少異なります。その他、心電図や腹部や骨盤部の超音波検査など、必要とされる検査は積極的に受けましょう。

 

まとめ

 

HTRは基本的に医師の管理下で行います。そのため、HRTを受ける前と受けていく途中でもいくつかの検査が必要になります。

 

その理由は、ひとつは今の症状が本当に更年期の症状なのか見極めるため、もうひとつはHRTを適切に行うことができるか判断するためです。

 

今回は、HRTを受ける際に必ず行う検査と受ける場合に定期的に必要な検査、そして更年期障害と診断するために行う検査について詳しく紹介しました。

 

更年期障害の治療にHTRを考えている人の参考になれば嬉しいです。

更年期障害の原因治療!HRTの具体的なやり方は?いつまで続ける?

更年期障害の治療とHRT(ホルモン補充療法)

更年期障害の治療としては高い効果を発揮するHRT(ホルモン補充療法)ですが、具体的にどのような薬を使って、どのように行っていくのでしょう?

 

治療を受けるときの注意点や事前に行う検査、リスクを最小限に抑えるために必要な検査など、知っておくことがいくつかあります。

 

今回は、HRTを実際に行っていく上で知っておきたい投与方法や効果があらわれるまでのおおよその期間、いつまで続ければ良いかといった具体的な目安を紹介します。

 

HRT(ホルモン補充療法)は閉経後の体に慣れるための潤滑油

 

更年期障害の主な原因は、女性ホルモンのエストロゲンが急激に減ることで脳がパニックを起こすことです。

 

エストロゲンは卵巣で作られます。 女性の体は、初潮が始まる思春期からエストロゲンの分泌が増え、妊娠出産に適した性成熟期を迎えます。

 

閉経によって卵巣はその機能を終え、エストロゲンの分泌がなくなるわけですが、閉経の5年位前から減少のスピードが急激に上がります。

 

閉経後は卵巣と副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンからエストロゲンが作られるのですが、その量はごく微量です。閉経後の女性は男性より体内のエストロゲン量は少なくなってしまうのです。

 

HRT(ホルモン補充療法)は、減り続けるエストロゲンを外から薬として補い、変化のスピードをなだらかにするために行います。一般的な終着点は、閉経後のエストロゲン微量状態に体が慣れるまでとなります。

 

HRTの目的は閉経後のエストロゲン微量期へのソフトランディング

HRTで使う女性ホルモン剤は2種類

 

基本的にHRTで使われる薬剤はエストロゲン剤と黄体ホルモン剤ですが、使われる目的はそれぞれ異なります。

 

HRTの主役はエストロゲン剤

 

HRTの主役はなんといってもエストロゲン剤です。黄体ホルモン剤はエストロゲンの子宮内膜増殖作用を阻止し、子宮体がんを予防するために使われます。

 

黄体ホルモン剤じたいに治療目的はないので、単体で使われることはありません。

 

子宮を摘出した人の場合は子宮体ガンのリスクを考慮する必要がないのでエストロゲン剤の単体投与が一般的です。

 

また、エストロゲン剤にはいくつか種類がありますが、作用の最も少ないエストリオールでは、単体投与が行われるときがあります。

 

エストロゲン剤の3つの種類

 

エストロゲンには3つの種類があります。体内での生成のしかた、構造や作用が少しずつ異なります。

 

  • E1(エストロン)
  • E2(エストラジオール)
  • E3(エストリオール)

 

この中で一番強い作用をもっているのがE2です。E1の2倍、E3の10倍です。

 

E1とE2は主に卵巣で作られます。E3は妊娠中に胎盤で大量に作られます。

 

E3は妊娠していない場合は卵巣ではあまり作られないので、血中にはほとんど検出されません。 更年期かどうかを診断するときは、エストロゲンの作用のもっとも強いE2の血中濃度をみます。

 

※正確には、E2とFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)の血中濃度が目安になります。

 

HRTで行う投与方法とは?

 

HRTでは、3種類のエストロゲン剤と黄体ホルモン剤を患者の体質や治療目的などによって使い分けます。薬の投与方法は経口投与と経皮投与があります。

 

  • 飲み薬(経口製剤)
  • パッチ剤(経皮製剤)
  • ゲル状(経皮製剤)

 

以前は経口投与がほとんどでした。特に結合型エストロゲンのプレマリンが広く使われていました。

 

よく効く薬ですが、長年の使用によって血栓症のリスクが高くなるという問題があります。 これは、経口薬は肝臓で分解されることを考慮して多量に服用する必要があるからです。

 

この副作用を解決するために経皮薬が開発されました。 皮膚から吸収された薬はそのまま血管に入り全身をめぐります。肝臓で分解されないので経口薬より少量で同じ効果が期待できるのです。

 

今は経口薬も少量投与が推奨されて、血栓症などの副作用も出にくくなっています。

 

経皮薬はパッチ剤とゲルがあります。どちらも効果は同じですが使い勝手が違うので自分に合った方法を選びましょう。

 

パッチ剤はアルコールを含むため、肌の敏感な人はかぶれてしまうこともあります。その場合はゲルで様子をみることがあります。

 

一般的に使われるエストロゲン剤と商品名

 

HRTで使われる女性ホルモン剤にはいくつか種類があり、また製薬メーカーによって商品名が異なるため分かりづらいですね。ここでは、主な有効成分と製品名を紹介します。

 

経口製剤

商品名 有効成分 備考
プレマリン 結合型エストロゲン E1製剤
ジュリナ エストラジオール E2製剤
エストリール エストリオール E3製剤
ウェールナラ エストラジオール+レボノルゲストレル 配合剤

 

経皮製剤

商品名 有効成分 備考
エストラーナ エストラジオール パッチ剤(貼り薬)
ディビゲル エストラジオール ゲル(塗り薬)
メノエイドコンビパッチ エストラジオール+酢酸ノルエチステロン パッチ剤(貼り薬)
ル・エストロジェル エストラジオール ゲル(塗り薬)

 

 

黄体ホルモン剤について

 

宮内膜増殖作用を抑える目的で使用される黄体ホルモン剤についても紹介しておきますね。

 

現在はエストロゲン剤との配合剤があるので、HRTでは主にそちらが主流です。

 

黄体ホルモン製剤-プロベラ・ヒスロン・ディファストンなど。 このほか、萎縮性膣炎の治療にエストリオールの膣剤もあります。

 

上手に使い分けよう!HRTの投与方法は4タイプ

 

では、どのように薬を使っていくのでしょう?基本的には周期的に服用する方法と継続して服用するがあります。

 

周期型にも2タイプ、継続型には使う薬によって2タイプあります。

 

(1)周期型

エストロゲンを連続して飲み、12~14日黄体ホルモンを服用する方法。パッチ剤の場合は連続して貼ることになります。

 

月経周期を作るわけですね。この方法では、黄体ホルモン剤を飲み終わる頃に出血がみられることがありますが、次第に減っていきます。

 

 

(2)休薬期間を設けた周期型

 

(1)の方法に黄体ホルモン剤を飲み終わった後、1週間程度の休薬期間を設ける方法です。こちらの方がより自然な月経周期に近くなります。

 

上記ふたつの周期型投与方法は、閉経前後の女性に向いています。ただ、(2)の場合は休薬期間に更年期の症状がつらいという人もいます。その場合は(1)で様子を見ます。

 
(3)2剤継続型
 

エストロゲン剤と黄体ホルモン剤を連続して服用します。今は合剤があるのでこちらを使うお医者さんが多いです。この方法では、定期的な出血はありませんが、不定期な出血はあります。しかし、これも次第に少なくなっていきます。

 

(4)エストロゲン単独投与型

 

エストロゲンだけを連続して服用する方法です。先に述べたように、子宮体ガンの心配のない女性には黄体ホルモン剤は使いません。

 

また、エストリールなどのE3製剤は作用が弱いので、子宮のある人でも用いられることがあります。

 

具体的には、閉経後10年くらい経ってからHRTを始める人や、周期型などで出血を嫌う人、骨粗しょう症の予防などです。

 

 

 

 

HRTはどのくらいで効果が現れる?

 

通常、HRTを行って2~3週間、早い人では1週間ほどで更年期症状が緩和されます。特に、ほてりやのぼせなどの自律神経失調症状に顕著にあらわれます。

 

治療効果をみる目安は、一般に2~3ヶ月から半年と言われています。医師によって多少異なりますが、改善があまりみられない場合は薬を変えたり別の治療をすすめることもあります。

 

HRTで大切なことは医師との十分なコミュニケーション

 

まず、HRTを始めると副作用として体に変化が現れることがあります。乳房が張ったり吐き気がしたりPMS(月経前緊張症)のような症状がでることがあります。

 

生理のような出血をともなうこともあり、びっくりして治療を独断で中止するようなことがないように事前に副作用についてしっかり聞いておきましょう。

 

症状がつらいときは、まずは医師に相談して薬や投与方法を変えてもらってください。

 

HRTで効果がみられないときは?

 

HRTを行ってみたけど、思ったように効果が現れないときもあります。

 

心の不調がメインの場合

 

投与方法や薬の量を変えても治療効果がみられないときは、更年期症状以外の原因が考えられます。不眠やうつ気分などは心身症かもしれません。

 

その場合はHRTでは十分な治療効果は期待できないのです。 ただ、このような場合も更年期の症状と心の症状が絡み合っていることが少なくありません。

 

婦人科でもHRTを受けながら抗うつ剤を処方されるときがあります。

 

漢方薬と併用で効果アップ

 

漢方治療は、西洋医学のHRTと違って足りなくなった女性ホルモンを外から補うのではなく、体のバランスを整えることによって免疫力を上げて症状を改善します。

 

HRTによって出血があるのが嫌だという人も多いです。更年期女性のQOLを考えると見過ごせないデメリットでもありますね。作用の弱いエストロゲンと漢方薬を併用して副作用を抑える治療もあります。

 

治療期間は5年まで?継続する場合とは?

 

HRTの最大の目的は更年期障害の改善です。治療効果があってつらい症状がなくなればいつでも中止してよいのです。

 

やめたことによって症状がぶり返すことがあれば、再度開始することは可能です。 ただ、リスクと得られるメリットを天秤にかけて治療を継続するかやめるかを判断する必要があります。

HRTと乳がんリスク

 

どんな薬でもメリットとデメリットがあります。以前エストロゲン単体でのホルモン治療で問題になった子宮体ガンのリスクは、黄体ホルモン剤との併用投与で解消されました。

 

しかし、乳ガンのリスクに関してはまだはっきりとした結論が出たわけではありません。2~4年ではリスクが上がらないとされていることから、HRTは5年以内が望ましいと言われているのです。

 

また、エストロゲンの単独投与では乳ガンの発症はそれほど上がらないとの報告もあります。

 

骨粗しょう症とHRT

エストロゲンは骨を丈夫に保つ働きがあります。エストロゲンの恩恵を受けられなくなる更年期以降、女性の骨はどんどんスカスカになってしまいます。

 

HRTを受ける際に女性ホルモン値だけでなく生活習慣病などの検査も必要になりますが、その際骨量が低下して骨粗しょう症のリスクが高い場合もあるでしょう。

 

HRTは骨粗しょう症の予防効果があることがわかっています。更年期障害が改善されても骨粗しょう症予防のために継続することもHRTのメリットのひとつです。

 

その場合はエストリオール(もっとも弱いエストロゲン製剤)を長期にわたって使うこともあります。

 

HRTの投与期間をまとめると、

  • 治療効果が出て満足したら中止して良い
  • 一般的には2~3年、5年以内が望ましい
  • エストリオール単体で骨粗しょう症予防目的で長期投与もある

 

まとめ

 

HRTは更年期障害に高い効果を発揮しますが、リスクがあることも忘れてはいけません。事前にしっかりメリットとデメリットの説明を受けましょう。

 

また治療を始めてからも定期健診をしっかり受けることはもちろん、医師と十分相談しながら納得して治療を受けることがとても大切です。

更年期障害に高い治療効果が!HRT(ホルモン補充療法)とは?

更年期障害の治療とHRT(ホルモン補充療法)

 

更年期障害や更年期のさまざまな症状に、もっとも有効とされているのがHRT(ホルモン補充療法)です。今回は、HRTとはどんな治療かを詳しく紹介します。

HRTは不足した女性ホルモンを外から補う原因治療

 

HRT(HormoneReplacementTherapy)は、減少した女性ホルモンを外から補う治療法です。

 

更年期障害はエストロゲンの急激な減少に体が追いつかない状態ですね。 厳密に言えば、女性ホルモンが減ったことではなく、急激に減少したという変化に脳が混乱して起こります。

 

ここで問題になってくるのが女性ホルモンのエストロゲンの減少なのですが、閉経してしばらくするとその状態に体が次第に慣れてきます。

 

これが更年期はいずれは治まるといわれる理由です。

 

HRTの目的は、エストロゲンを外から補うことで減少のカーブを緩やかにして、エストロゲンの微小な量に無理なく体を慣れさせていこうとソフトランディングさせることにあります。

 

HRTは紆余曲折の歴史を経て確立された

HRTは欧米ではその歴史は古く、現在も使われているプレマリン(結合型エストロゲン)は1942年に発売されています。これは、妊娠した馬の尿から抽出された天然型のエストロゲンです。

 

エストロゲン剤と子宮体ガンの関係

 

当時は薬を服用した女性が若返るともてはやされましたが、1970年代に入ると子宮体がんのリスクが増えることがわかり、一時期下火になりました。

 

その後、研究開発がすすめられ、エストロゲンだけでなくプロゲステロンを加えることで子宮体がんの発生リスクが抑えられることがわかり、HRTは復活しました。

 

現在のHRTは一部のケースを除き、エストロゲンとプロゲステロンの2剤を併用するのが一般的です。

 

HRTと乳がんの関係-2002年WHI試験とは?

 

ところで、日本でもホルモン療法と聞くと乳がんのリスクが高まると不安な声が聞かれることが多いですね。それは、2002年にアメリカからWHIという疫学調査の結果が発表されたことが大きく影響しています。

 

まず、アメリカでのHRTの普及について説明すると、1986年には骨粗しょう症の治療に対して承認をしています。1990年代には更年期障害、骨粗しょう症、脂質異常だけでなく、皮膚への効果や変形性関節症予防など、閉経後の女性の予防医学として推奨していました。

 

さらに、アメリカ人は心疾患を患う人が多いことから、冠動脈疾患の予防効果も期待していたのです。そこで、閉経後女性にHRTを行ってリスクとベネフィット(得られる利益)を検証しました。

 

その結果は、大方の予想を裏切るものだったのです。 まず、乳がんリスクが予想を上回ったことから試験開始後5.2年で試験が中止されることになりました。

 

また、冠動脈疾患に対する予防効果も得ることができませんでした。 この試験結果が世界中に公表され、HRTを行う人が減少してしまったのです。

 

HRTで乳がんリスクは増えるのか?WHIの問題点

 

後にこのWHI試験にはいくつかの問題点があることが指摘されています。主な点は以下です。

 

  • 調査対象者が63.3歳(高齢になってからの投与)
  • 肥満や脂質異常の人が多かった(約70%が肥満)
  • 喫煙者が多かった(約50%)

 

その他投与方法にも問題がありました。 実は、この際中止されたのは子宮のある女性にエストロゲンとプロゲステロンの併用投与をした群でした。

 

それとは別に子宮のない女性に対してエストロゲンの単体投与の試験はその後も続けられていました。 このふたつの調査結果とその後の知見により、現在まででHRTに対するおおよその見解があります。

 

  • 乳がんリスクは5年以内であれば増えない
  • 60歳未満または閉経後10年以内の女性ではリスクよりメリットのほうが高い
 

HRTはどんな更年期症状に効果がある?

 

このように、HRTはたくさんの研究や試験、調査結果から現在では更年期治療の柱となっているわけですが、具体的にその治療効果はどんなものか気になりますね。 HRTがよく効く症状とその他のメリットを紹介します。

 

血管運動神経症状には即効性も!

 

更年期症状の代表とも言えるホットフラッシュや動悸、息切れに高い効果を発揮します。ほとんどの女性が投与を始めて2~3週間で実感するほどです。

 

二つの側面からうつ気分も解消!

 

なんとなく憂うつといったうつ病までではない軽度のうつ気分であれば効果は高いです。

 

これは、エストロゲン自体が気分を明るくする作用があることと、ホットフラッシュなどのつらい症状が解消されたことからくる二次的なものかは判断は難しいところですが、多くの女性が実感しています。

 

皮膚や粘膜にうるおいが戻る

 

エストロゲンには皮膚や粘膜にうるおいを保つ作用があります。膣のヒリヒリ感や性交痛の解消になります。

 

更年期には背中を蟻が走ったような蟻走感や皮膚のかゆみ・かさつきなども悩みの種ですが、これらも改善されます。

 

HRTはアンチエイジング効果が高いことから、欧米では第2の人生を楽しくイキイキと過ごすために、5年10年と続ける人も少なくありません。

骨粗しょう症の予防にも効果が!

 

女性の骨量は30代をピークに減り続けます。エストロゲンがなくなった閉経後は骨の生成が破壊に追いつかなくなり、数年から10年ほどで2~3割減少してしまうんです。

 

65歳以上では半数近くの人が骨粗しょう症にかかっているといわれます。80歳以上ではなんと7割もの人が!

 

骨粗しょう症の予防という点から見た場合、遅くとも閉経後2~3年以内から始めることを推奨しています。

 

寝たきりになる原因は骨粗しょう症による骨折が、脳出血などの脳血管障害に次いで2位です。骨粗しょう症予防はアフター更年期の女性にとってキーワードのひとつといえそうです。

 

コレステロール値を低下させる

 

エストロゲンには悪玉コレステロールを低下させて善玉コレステロールの合成を促進させる作用があります。HRTを行うことによって動脈硬化を防ぐ効果も期待できます

HRTは誰でも受けられる?受けられない場合とは?

 

更年期障害に高い効果を発揮するHRTですが、中には受けることができない人、受ける際には慎重に行うべき人、条件付で行う場合の人がいます。

 

日本産婦人科学会のホルモン補充療法ガイドライン2017年度版から紹介します。

 

HRTを受けられない人
 
  • 重度の活動性肝疾患
  • 現在の乳ガンとその既往
  • 現在の子宮内膜ガンと低悪性度子宮内膜間質肉腫
  • 原因不明の不正性器出血
  • 妊娠が疑われる場合
  • 急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往
  • 心筋梗塞および冠動脈に動脈硬化性病変の既往
  • 脳卒中の既往

 

HRTを行う際には慎重にすべき人
 
  • 子宮内膜ガンの既往
  • 卵巣ガンの既往
  • 肥満
  • 60歳以上または閉経後10年以上の新規投与
  • 血栓症のリスクを有する場合
  • 冠攣縮および微小血管狭心症の既往
  • 慢性肝疾患
  • 胆嚢炎および胆石症の既往
  • 重症の高トリグリセリド血症
  • コントロール不良な糖尿病
  • コントロール不良な高血圧
  • 子宮筋腫,子宮内膜症,子宮腺筋症の既往
  • 片頭痛
  • てんかん
  • 急性ポルフィリン症
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)

 

ガイドラインではこう書いてありますが、要点をまとめるとこういうことです。

 

HRTは適切に行えば子宮体ガンや乳ガンのリスクはあまりありませんが、現在かかっている人は行えません。

 

上記の項目にはありませんが、乳ガンに関しては、家族にこれらのガン履歴がある場合も行わない場合が多いです。 乳ガンにはエストロゲン依存性のガンがあり、日本人の乳ガンの65%がこのタイプ。

 

これは、がん細胞にエストロゲン受容体があり、ここにエストロゲンが結合してガン細胞が増殖するガンだからです。

 

また、エストロゲンは血液を固まりやすくする作用があり、血栓症を引き起こすリスクが高くなります。そのため、心筋梗塞や脳梗塞などにかかったことがある人も行えません。

 

子宮内膜症や子宮筋腫を持っている人は、エストロゲンが刺激になって成長する可能性があるので、注意して行う必要があります。

 

肥満や喫煙週間のある人も静脈瘤や血栓症のリスクが高いので、慎重に行うグループに分けられます。

 

HRTを行う場合は、これらのリスクを持った人は医師と十分話し合い、納得の上で治療を受けるようにしてください。またHRT治療中は、定期的な生活習慣病、婦人科系の検診は必須となります。

 

まとめ

 

更年期障害や更年期のさまざまな症状に、もっとも有効とされているのがHRT(ホルモン補充療法)です。欧米では主流となっている治療法ですが、日本ではまだ受ける人が少ないのが現状です。

 

HRTに対する抵抗感は、一部の情報が誤解されたため副作用などリスクの高い治療だと不必要に怖がっている人が多いことがあげられます。

 

また、自然の摂理に逆らうのは良くないという日本人の気質や文化、価値観も関係していると指摘する専門家もいます。

 

最近は医療においてもインフォームド・コンセントが重要となっていますね。特に更年期治療においては、患者がみずから積極的に治療に関わる姿勢がとても大切です。

 

そのためにも、医者任せにするのではなく治を行う上でのメリットとデメリットを熟考しておくことがとても大切になります。