更年期の不調は自律神経の乱れよって起こります。直接の原因は、女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少すること。
その体の変化がなぜ自律神経のバランスを崩すことになるのでしょう?
自律神経はどんな神経をいうのか、どんな働きをするのか、バランスを崩すと心身にどんな影響があるのかをみていきましょう。
自律神経ってどんな神経?
自律神経は交感神経と副交感神経のふたつから成り立っています。対照的な作用があるふたつの神経がバランスをとりあって、体内の環境を一定範囲内に保っています。
このような恒常性を保つ状態や機能をホメオスターシスといいます。
- 交感神経・・・活動する神経
- 副交感神経・・・休息する神経
交感神経と副交感神経は体にどんな作用がある?
交感神経と副交感神経の相反する作用をまとめました。
体の部位 | 交感神経 | 副交感神経 |
---|---|---|
瞳孔 | 拡大する | 収縮する |
皮膚 | 発汗、鳥肌を立てる | 乾燥する |
呼吸 | 激しくする | ゆっくりさせる |
心筋 | 収縮する | 弛緩する |
心拍数 | 増加する | 減少する |
血圧 | 上昇 | 下降 |
消化器・消化液の分泌 | 抑制する | 促進する |
膀胱 | 尿をためる | 排尿する |
生殖器 | 子宮を収縮・排卵促進 | 子宮を弛緩させる |
ホルモン分泌 | 促進する | 安定させる |
血糖・血中脂質 | 上昇させる |
安定させる |
自律神経の働きと感情の変化
自律神経は人の精神活動にも影響を与えます。
交感神経と副交感神経がバランスよく働いているときはリラックスして平穏な気分になります。反対に驚いたり恐怖を感じたり激しい怒りを感じたときは、交感神経が極度に興奮している状態です。
失望感や抑うつ感、憂うつ感、疲弊や悲哀を感じているときは、交感神経と副交感神経のどちらも抑制された状態になります。
不安や怒り、緊張、興奮が長く続いているような場合は、交感神経と副交感神経がバラバラに興奮している状態です。
自律神経は意思とは関係なく動く
自律神経の大きな特徴は自分の意思ではコントロールができないということです。
神経系は大きく2つに分類されます。脳および脊髄を中枢神経、その他の神経を末梢神経と呼びます。
末梢神経は中枢神経とつながっていて、中枢神経を木の幹、末梢神経を枝と表現されます。 末梢神経はさらに2つに分類されます。
- 体性神経・・・自分の意思によって動かせる
- 自律神経・・・自分の意思によって動かせない
体性神経は手を動かしたり、皮膚に触ったときに温度を感じたりする神経のことです。動物神経ともいわれます、対して自律神経のことを植物神経といいます。
自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態です。
説明したとおり、自律神経は自分の意思で動かすことはできません。心臓の動きや消化液の分泌などは、こうなれっ!と願ってもどうにもなりませんね。
自律神経失調症や更年期障害の自律神経失調症状は、気持ちの持ちようだけでどうにかなるような簡単なことではないのです。
でも、食事や生活環境、ちょっとした訓練法などで自律神経を整えることは可能です。
自律神経はなぜ乱れてしまうの?
交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまう自律神経失調症は何が原因で起こってしまうのでしょう?また、どんな人がなりやすいのでしょう?
自律神経が乱れやすい体質
生まれつき自律神経が乱れやすい体質の人がいます。子供のころから乗り物酔いしやすかったり、朝礼で倒れやすかったりした人は注意が必要です。
慢性的なめまいや肩こりに悩まされていたり、大人になっても虚弱な体質だったり低血圧のことも多いです。
神経質な性質の人
自律神経の調節機能に問題はないのですが、不安感や恐怖感などの心理的要因が強く自律神経を乱してしまいます。自分の体の変調に敏感な人、ささいなことでも気に病んでしまう人です。
心身のストレス
日常生活での心身のストレスが原因となって発症するタイプ。人に気を使いすぎる人がなりやすいです。
自分の意見や感情を後回しにして周囲にあわせてしまうので、ストレスが溜まって心身に不調があらわれてしまいます。
自律神経失調症と診断される日本人の約半数の人がこのタイプです。
うつ状態からの自律神経の乱れ
慢性的なストレスにさらされることによってうつ状態となり、疲労、倦怠感、不眠、食欲不振など体の変調が主な症状となってあらわれます。
几帳面な人や完全主義者がなりやすい性格です。
生活習慣の乱れ
最近増えているのがこのタイプです。夜更かしや昼夜逆転の生活によって体内リズムが崩れることが原因です。
更年期の女性に自律神経失調症が多いのはなぜ?
更年期の女性の体に起きている大きな体の変化は女性ホルモンのバランスが大きく乱れることです。
卵巣機能の低下によって、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が急激に減ります。 ホルモン分泌の司令塔は大脳の視床下部です。
視床下部は体中のホルモンバランスを常に見張っていて、ほんの少しでも増減があると、瞬時に分泌を促す指令を出します。
更年期になると、卵巣の機能が低下してくるので、指令どおりのエストロゲンを分泌することができなくなってきます。
それでも、視床下部は矢継ぎ早に指令を出し続けます。しかし、指令どおりにエストロゲンが分泌されないので視床下部は混乱してしまうのです。
自律神経の司令塔も同じ視床下部なので、その混乱が自律神経の乱れをも引き起こしてしまうのです。
まとめ
自律神経は意思だけではどうにもなりません。睡眠不足やストレスですぐにバランスを崩してしまいます。
それに加えて更年期はホルモンバランスが急激に変化するとき!それが自律神経を乱す要因のひとつというのは、なんとも悩ましいですね。
更年期の不調を改善するためには、まずは40代50代は自律神経失調症になりやすい年代ということを自覚することから始まるといえます。