女性の寿命は伸びていて、閉経を迎えてから30年以上の余命があります。大きく変化した自分の体のことを理解することは、老年期を素敵な円熟期にすることができます。
今回の記事では、閉経後の女性の体と気をつける病気を紹介します。
女性の体はエストロゲンで守られてきた
誰にでも訪れる更年期。複雑な気持ちを抱く女性も多いです。少なからずショックを受ける人もいるでしょう。
「生理がなくなって楽よー」という先輩からの言葉も素直に受け取れないことも…。
もう女として見られないのでは? という不安は、当事者になると思いのほか精神的にダメージを受けてしまうものです。
でも、女優さんやタレントさん、そして身近にも更年期を過ぎてもなおイキイキと輝いている女性がたくさんいます。
更年期以降はエストロゲンの働きによって守られてきたさまざまな病気のリスクが上がることは事実です。高血圧になった、骨がもろくなった、という話は聞いたことがありませんか?
女性の守り神!エストロゲンの偉大なる働き
エストロゲンは女性ホルモンのひとつです。ホルモンの特徴として特定の器官で作られ特定の器官で作用するということが挙げられます。
(成長ホルモンは別です。これは全身に作用します)
ホルモンが作用するためには、その刺激を受け取るレセプター(受容体)が必要です。 エストロゲンの信号を受け取り活用できるようにする受け皿(受容体)は全身にあります。
その機能も多岐にわたっていますが、よく知られているのが乳腺を発達させたり排卵などの生殖機能ですね。
また、骨を丈夫に保ったりコレステロールを調整するなど、女性はたくさんの恩恵を受けてきました。
では早速、卵巣からのエストロゲンの分泌がなくなることで起こる病気のリスクを見ていきましょう。
閉経後に気をつけたい病気
更年期障害の代表選手のホットフラッシュなど自律神経の乱れが要因となっている不調は、体がエストロゲンが欠乏している状態に慣れてくれば次第に治まっていきます。
でも、重要なのは、エストロゲンによって守られてきた女性の体は更年期以降一気に病気のリスクが高まるということです。特に顕著なのが骨と血管です。
骨粗しょう症
女性は老年期になると骨粗しょう症になる人が多いことはずいぶん知られてきました。エストロゲンは骨を丈夫に保つ作用があります。
骨は破壊と再生を繰り返しています。骨を壊す細胞を破骨細胞、作る細胞を骨芽細胞とよび、この二つをコントロールしているのが骨細胞です。
破骨細胞の働きに骨芽細胞が追いつかなくなると骨量が減少していきます。これが進んだ状態が骨粗しょう症です。
エストロゲンはこの破骨細胞を調整する働きがあることがわかってきました。具体的には、破骨細胞に細胞死を引き起こさせ、数や寿命を調整しています。
閉経後にエストロゲンが減少することによって、今まで抑制されてきた破骨細胞が暴走を始めます。
その結果、骨の再生が骨の破壊に追いつかなくなり骨量が減少していきます。 この状態は閉経後10~15年ほど続き、閉経後骨粗しょう症とよびます。
この時期を過ぎても安心できません。その頃は加齢による腸管などの老化によってカルシウムを上手く取り込めなくなり、慢性のカルシウム不足になっていきます。
体がカルシウム不足になると、それを補うために骨からカルシウムが溶け出します。この状態が続くと緩やかに骨量が減っていきますが、この状態を老人性骨粗しょう症といいます。
結局のところ、女性は更年期以降、骨がもろくなっていくわけです。
脂質異常症(高脂血症)
高脂血症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪が正常値を超えて高くなった状態をいいます。
自覚症状はないので健康診断のときなどに発覚することが多いのですが、放っておくと動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。
高血圧症
一般的に女性は血圧が低いことが多いのですが、更年期に血圧が高くなることがあります。これは、自律神経の乱れで常に交感神経優位になっていることが大きな原因と考えられ、通常は更年期を過ぎれば落ち着いてきます。
しかし、更年期以降に高血圧症になる女性もいるので注意が必要です。高血圧も動脈硬化を進ませる原因となります。
糖尿病
エストロゲンが減少すると内臓脂肪の蓄積が加速されるため、更年期以降に糖尿病を発症する女性が増えています。
糖尿病は、遺伝因子、過食、運動不足が原因と考えられていますが、エストロゲンの減少も要因のひとつです。
狭心症・心筋梗塞
心臓の冠動脈が動脈硬化になると血液の流れが悪くなります。心臓の筋肉が酸素不足になり激しい胸痛の発作がおこります。
これが狭心症発作で、一過性のもので10分以内に治まります。
さらに症状が進むと冠動脈が完全に詰まって血液が流れなくなり、次第に心臓の細胞が壊死していきます。これが心筋梗塞で命に関わる怖い発作です。
女性は閉経後、エストロゲンの欠乏によって心血管系の病気のリスクが高くなります。
脳梗塞・脳出血
脳の血流が詰まって血流障害を起こすことで脳の機能に障害が起こるのが脳梗塞です。
脳出血には脳内に血の塊ができる脳出血と、脳の表面を血液が覆うくも膜下出血があります。 以前は脳出血が多かったのですが、最近は脳梗塞が増えています。
脳出血は高血圧が引き金になりますが、治療薬の開発や減塩の浸透によって減ってきたと思われます。代わって動脈硬化を要因とする脳梗塞が増えているのです。
女性特有のがん
子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)や卵巣がんについても注意が必要です。
卵巣がんは更年期以降の女性に多く発症しています。
子宮体がんは子宮内膜がんとも言います。エストロゲンによって増殖した内膜は月経という形で排出されていましたが、閉経後はそれもなくなります。
エストロゲンは微量でも体内に存在するので、閉経後もエストロゲンの刺激によって子宮内膜が増殖し子宮体がんが発生しやすくなるのです。
まとめ
女性の体はエストロゲンによって守られてきました。こうして振り返ってみると、鬱陶しいと思っていた生理も愛おしくなりませんか?
閉経後はその恩恵がなくなり、女性の体は病気のリスクが高まります。そのことを意識して生活習慣を改めたり、健康診断を受けるなどしてしっかり予防したいものです。
そうすれば、シニア世代になってもいきいきと輝く未来が見えてくるはずです。