更年期の不定愁訴に漢方薬が効果あり!おすすめの三大処方薬

更年期障害の漢方療法
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更年期の不定愁訴に漢方薬が効果あり!おすすめの三大処方薬

更年期障害には漢方が効く-よく耳にしますね。実際に産婦人科医など専門家の書いた著書や、女性誌の更年期特集ではHRT(ホルモン補充療法)と並んで必ずと言っていいほど漢方薬が紹介されています。

 

ドラッグストアの漢方薬の棚を見ると、「更年期症状に」と書いてあるプレートを目にします。でも、実際に試してみようかな・・・と思っても、何を選んでよいか見当がつかなくなってやめてしまうことってありませんか?

漢方薬の基礎知識を知っていて欲しい理由

 

漢方薬は現在は西洋医学の医師も処方していることも多いです。漢方薬はドラッグストアでも購入できますし、専門的な知識を持った薬剤師がいる漢方薬局も街中で多く見かけます。

 

病院で処方してもらう漢方薬は別として、保険のきかないドラッグストアや漢方薬局で購入するとなると、そうそう安いものではありません。

 

漢方薬は病名に対してではなく、その人の体質やそのときの症状を含めた全体の状態を診て処方されます。

 

西洋薬ほどではありませんが副作用がまったくないわけではありません。 店頭やネットのドラッグストアで購入する際には、一通りの知識は必要です。

 

それに、婦人科や漢方薬局で処方してもらうときも、言われるがままに飲んでいるだけでは漢方の力を十分活用したとは言えないのです。

 

漢方は日本の伝統医学!歴史をちょっと知っておきましょう

 

漢方薬の中で一番有名なのが葛根湯ですね。配合されている成分(これを生薬と言います)を見ると、葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)です。

 

漢方薬の名前も漢字だらけ。漢方って中国の医療と勘違いしている人もいるようです。でも、漢方はれっきとした日本の伝統医療なのです。

 

漢方は中国医学を基礎に日本で独自に発達した

 

2千年以上の歴史を持つ中国医学ですが、日本には5世紀から6世紀頃遣隋使や遣唐使によって伝えられたと考えられています。

 

飛鳥時代末期には典薬寮(てんやくりょう)という医療機関が設置され、医師や鍼師、按摩師がいました。 飛鳥時代から奈良時代にかけて中国から人参や大黄などの生薬が持ち込まれています。

 

その後平安時代に編纂された日本最古の医学書「医心方」から、中国医学を基礎にしながらも日本の気候風土、文化が反映され、漢方は日本独自の発展を遂げて行ったことがわかります。

 

鎌倉時代になると、禅宗の僧侶が医療の担い手になったことからそれまで貴族階級のものだった漢方が一般庶民も恩恵を受けるようになりました。 その後いくつかの流派が切磋琢磨して漢方医学は大きく発展していきます。

 

明治時代~現代の漢方

 

明治時代になると漢方は一気に衰退します。近代化を推し進めていた明治政府によって医療は西洋医学に一本化されたためです。漢方医は医師と認められなくなったわけです。

 

漢方は医学としては否定されましたが、漢方薬の薬効は民間レベルでは根強く伝えられてきました。そこには、生薬から有効成分を単離させる研究など薬効を解明しようとする研究者の力もあります。

 

戦後になって医学会にも変化が起きてきます。

 

1950年には漢方医学を体系的に発展させる目的で日本東洋医学会が発足しました。 この時代、慢性疾患の増加や西洋薬の副作用の問題など、西洋医学一本では対応できなくなっていたという背景もあります。

 

そして漢方薬の薬理作用や作用のメカニズムなどの研究が盛んになっていくのですね。 現在では148処方の漢方製剤と200種類以上の生薬が保険適用となっています。

 

更年期障害に対する漢方のアプローチは?

 

ざっと漢方の歴史について説明してきましたが、ではどうして漢方が更年期治療に高い効果を発揮するのでしょう?

 

更年期障害の治療でもっとも効果があるのが西洋医学のHRT(ホルモン補充療法)です。これは、足りなくなった女性ホルモンを外から補う治療法で、原因に直接アプローチする方法。

 

対して漢方の考え方はちょっと違います。

 

閉経による女性ホルモンの減少は自然な生理現象と捉え、そこに治療の主眼を置くのではなく、つらい症状を取りながら生体バランスを整えていこうというアプローチをするのです。

 

不定愁訴は漢方薬の得意分野!

 

漢方では、病気を体全体のバランスが崩れた状態ととらえます。「なんとなくだるい」「手足が冷える」「頭が重い」など自覚症状があっても検査では異常がみられない、いわゆる不定愁訴は漢方の得意とするところです。

 

西洋医学では病名がついて治療方針が決められます。漢方は「」と呼ばれる独自の診断基準があって、治療方針を指示する物差しでもあります。

 

証は、その人の体質や心身の状態(病態)など総合的に判断されます。病態は変化していきますし、治療をしていく上で体質も変わることもあるので、一度決定したらずっと変わらないというものではありません。

同病異治と異病同治

 

漢方薬は証をもとに処方されます。そのため、同じ症状でも人によって違う漢方薬が出されることがあります。

 

これを同病異治(どうびょういち)といいます。

 

また、違う病気でも同じ薬で治療することもあります。例えば、先ほど例に出した葛根湯の場合、風邪だけでなく、神経痛や乳腺炎、肩こりの治療にも用いられます。

 

これを異病同治(いびょうどうち)といいます。

 

そのため、ひとくちに更年期障害といっても、自分に合った漢方薬を選ぶことが症状改善のためにとても重要です。

 

ひとつの処方で多方面に効果が期待できる

 

異病同治の補足になりますが、漢方薬は複数の生薬から作られています(例外はありますが)。

 

そのためそれぞれの生薬のもつ成分の相乗効果によって多方面の薬効が現れるのも漢方薬の特質なのです

 

例えば、イライラ感、肩こり、冷えなどの更年期の症状がひとつの処方で楽になることも期待できます。

 

更年期障害によく用いられる漢方薬は?

 

では、実際にどんな処方が合っているのでしょう。判断するためにはまず自分の証を見極める必要があります。

 

次に現在の体の状態を把握します。 漢方医は四診と呼ばれる独自の証の判断法を用います。(証を立てる)これは長年の経験と知識が必要になってきますので、おおまかな証の見当の付け方を紹介します。

 

体力・抵抗力は「虚実」でみる

 

漢方で使われる概念に虚実があります。ざっくり言うと

  • 虚証-痩せ型で体力がなく、病気に対する抵抗力が弱い
  • 実証-筋肉質のがっちりした体型で体力があり、病気に対する抵抗力が強い

 

虚証と実証の判定基準 どちらにも当てはまらない場合が多いときは「中間証」です。

 

病気の進行度合いは「陰陽」でみる

 

陰陽はすべてのものを陰と陽のふたつに分けて考える古代中国から伝わる自然界の法則です。

 

陰は活動が鎮静的で冷たい性質を持つもの、陽は活動が活発で温かい性質を持つものの象徴です。

 

  • 陰証-顔色が青い・発汗が少ない・手足が冷える・下痢気味・体温が低い・脈が遅い・血圧が低いなど

 

  • 陽証-顔色が赤い・汗をかきやすい・暑がり・便秘気味・体温が高い・脈が速い・血圧が高いなど

 

気・血・水は体を構成する大切な要素

 

漢方では体をめぐるエネルギーや液体、さまざまな生体活動の要として「気・血・水」の概念があります。この3つの要素が滞りなく循環しているとき、人は健康だと考えます。

 

 

「気・血・水」は概念上のものなので、実際に目に見えるものではありませんが、現在では西洋医学における自律神経系が「気」、循環器系が「血」、循環器系以外の体液やホルモンなどが「水」を指しています。

 

「気・血・水」が乱れると・・・

 

気滞(きたい) 気が滞って流れが悪くなる 頭が重い・喉が詰まる・胸や脇の痛み・腹部膨満・抑うつ
気逆(きぎゃく) 気が逆流する 発作性の冷え・のぼせ・動悸・頭痛・げっぷ・発汗・不安・焦燥感
気虚(ききょ) 気が不足した状態 元気が無い・倦怠感・疲れやすい・食欲不振・意欲低下
血虚(ちきょ) 血が不足したり栄養機能が衰えた状態 肌荒れ・不眠・貧血・こむらがえり・血行不良・過少月経
お血(おけつ)
うっ血して古い血がよどんだ状態 月経痛・口の渇き・色素沈着・痔・肩こり・頭痛、腰痛などの痛み
水毒(すいどく)
水が体内に停滞した状態、偏って存在する状態 浮腫・吐き気・嘔吐・排尿障害・下痢・めまい・立ちくらみ

 

更年期症状はまさに「気・血・水」のバランスを崩したことによる不調だとわかりますね。

 

女性に付きまとう「血の道症」

まだ若いとき、月経が重く仕事にも支障が出る時期がありました。その時、年配の女性から「血の道症ね」と言われてきょとんとした記憶があります。

 

「おけつ・・・って言うのよ」とも言われました。

 

その後出産を機に月経にまつわる悩みはキレイになくなったのですが、更年期になって再び重く脳裏に浮かんできました。

 

血が滞って起こる症状は先にあげたものだけでなく、めまいや動悸・ほてり・のぼせ・冷え症にもなります。女性特有の月経痛や子宮筋腫、そして更年期障害も重くなります。

 

そのため、更年期障害にはお血を取る駆お血剤が良く使われます。

 

駆お血剤とは、当帰(とうき)、川?(せんきゅう)、桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、紅花(こうか)、延胡索(えんごさく)、大黄(だいおう)などを多く含んだ漢方薬です。

 

覚えておきましょう!更年期治療の3大漢方薬

 

証を見極めて気・血・水がどうなのか、どの漢方薬を選べばよいのかますます迷ってしまいますね。そこで、更年期の三大処方といわれている漢方薬を紹介します。どれもたいていのドラッグストアで販売されています。

 

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン) 駆お血剤の代表的な漢方薬で、比較的体力のある人に処方されます。肩こり・頭痛・下腹部痛・冷えのぼせなど血管運動神経症状によく効きます。
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン) こちらも駆お血剤ですが、体力の無い人にはこちら。疲れやすく貧血気味、冷え症、むくみなど抹消循環障害に効きます。
加味逍遙散(カミショウヨウサン) こちらも体力のあまりない人に用いられます。10種類以上の生薬が配合されていて多方面で作用が期待できます。のぼせや肩こり、頭痛以外にもイライラや不安感など精神神経症状にもよく効きます。

 

 

漢方薬の副作用と合う合わないの判断基準は?

 

漢方薬も西洋薬に比べれば少ないですが、副作用がないわけではありません。重篤な副作用としては1996年に慢性肝炎や肝硬変の治療に使われた小柴胡湯(ショウサイコトウ)の副作用で間質性肺炎が起こり、患者さんが亡くなりました。

 

また、証に合わない場合は胃の不快感やアレルギーを起こすこともあります。

 

気をつけたい副作用
  • 麻黄-血圧上昇・動悸・発汗・食欲不振・吐き気など
  • 甘草-血圧上昇・むくみ・だるさなど
  • 桂皮-発疹・皮膚のかゆみなど
  • 附子-動悸・のぼせ・発汗・不整脈・舌の痺れなど
  • 大黄-下痢・腹痛など
  • 石膏-胃もたれ・食欲不振など

 

これら以外にも胃の弱い人が注意する生薬もあります。不快感の原因が空腹時の服用や量によるものであれば、食後に服用する・量を減らすなどで対応することもあります。 (通常、漢方薬は食間に服用します)

 

また、漢方薬は西洋薬と併用できるものが多いのですが、病状や体質によります。処方されている薬がある場合は必ず医師に相談しましょう。

 

漢方薬の副作用を避けるには?

 

飲み始めて少しでもおかしいと思ったらすぐに服用を中止しましょう。飲みはじめから2週間は特に注意して体調をみましょう。

 

漢方薬が合っているってどんなとき?

漢方薬の中には急性症状に使われるものもあります。そういう方剤の場合は即効性がありますが、更年期障害の治療では比較的ゆっくりと体質を改善していくので2週間程度は服用を続けて様子をみます。

 

もちろん、副作用やアレルギー症状など、おかしいなと感じたら中止します。 ただ、漢方薬ではなんらかの症状の改善がみられれば合っていると判断して服用を続ける場合があります。

 

更年期のつらさが一気になくなったわけではないけど、便秘が解消された、冷え性が改善されたといった場合です。

 

最後に~更年期からの漢方との付き合い方

 

更年期の症状は人によって現れる場所も程度も違います。それに日によって不調の場所が変わったり一定しません。

 

今日は頭痛がするから鎮痛剤、だるくてたまらないから栄養ドリンクでも飲もうか・・・。入れ替わり立ち代り現れる不定愁訴には本当に悩まされます。

 

漢方薬は乱れた生体バランスを整え、自然治癒力を高める作用があります。証に合った薬を使えば、効き目は緩やかかもしれませんが、気がつけばなんとなく体が楽かも・・・ときっと感じるはずです。

 

閉経によって女性の体は大きく変化します。自分の今の状態はどんなだろうと客観的に見ることは、アフター更年期を健康に過ごすためにもプラスになること間違いなしです。

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