更年期障害の原因治療!HRTの具体的なやり方は?いつまで続ける?

更年期障害の治療とHRT(ホルモン補充療法)
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更年期障害の原因治療!HRTの具体的なやり方は?いつまで続ける?

更年期障害の治療としては高い効果を発揮するHRT(ホルモン補充療法)ですが、具体的にどのような薬を使って、どのように行っていくのでしょう?

 

治療を受けるときの注意点や事前に行う検査、リスクを最小限に抑えるために必要な検査など、知っておくことがいくつかあります。

 

今回は、HRTを実際に行っていく上で知っておきたい投与方法や効果があらわれるまでのおおよその期間、いつまで続ければ良いかといった具体的な目安を紹介します。

 

HRT(ホルモン補充療法)は閉経後の体に慣れるための潤滑油

 

更年期障害の主な原因は、女性ホルモンのエストロゲンが急激に減ることで脳がパニックを起こすことです。

 

エストロゲンは卵巣で作られます。 女性の体は、初潮が始まる思春期からエストロゲンの分泌が増え、妊娠出産に適した性成熟期を迎えます。

 

閉経によって卵巣はその機能を終え、エストロゲンの分泌がなくなるわけですが、閉経の5年位前から減少のスピードが急激に上がります。

 

閉経後は卵巣と副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンからエストロゲンが作られるのですが、その量はごく微量です。閉経後の女性は男性より体内のエストロゲン量は少なくなってしまうのです。

 

HRT(ホルモン補充療法)は、減り続けるエストロゲンを外から薬として補い、変化のスピードをなだらかにするために行います。一般的な終着点は、閉経後のエストロゲン微量状態に体が慣れるまでとなります。

 

HRTの目的は閉経後のエストロゲン微量期へのソフトランディング

HRTで使う女性ホルモン剤は2種類

 

基本的にHRTで使われる薬剤はエストロゲン剤と黄体ホルモン剤ですが、使われる目的はそれぞれ異なります。

 

HRTの主役はエストロゲン剤

 

HRTの主役はなんといってもエストロゲン剤です。黄体ホルモン剤はエストロゲンの子宮内膜増殖作用を阻止し、子宮体がんを予防するために使われます。

 

黄体ホルモン剤じたいに治療目的はないので、単体で使われることはありません。

 

子宮を摘出した人の場合は子宮体ガンのリスクを考慮する必要がないのでエストロゲン剤の単体投与が一般的です。

 

また、エストロゲン剤にはいくつか種類がありますが、作用の最も少ないエストリオールでは、単体投与が行われるときがあります。

 

エストロゲン剤の3つの種類

 

エストロゲンには3つの種類があります。体内での生成のしかた、構造や作用が少しずつ異なります。

 

  • E1(エストロン)
  • E2(エストラジオール)
  • E3(エストリオール)

 

この中で一番強い作用をもっているのがE2です。E1の2倍、E3の10倍です。

 

E1とE2は主に卵巣で作られます。E3は妊娠中に胎盤で大量に作られます。

 

E3は妊娠していない場合は卵巣ではあまり作られないので、血中にはほとんど検出されません。 更年期かどうかを診断するときは、エストロゲンの作用のもっとも強いE2の血中濃度をみます。

 

※正確には、E2とFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)の血中濃度が目安になります。

 

HRTで行う投与方法とは?

 

HRTでは、3種類のエストロゲン剤と黄体ホルモン剤を患者の体質や治療目的などによって使い分けます。薬の投与方法は経口投与と経皮投与があります。

 

  • 飲み薬(経口製剤)
  • パッチ剤(経皮製剤)
  • ゲル状(経皮製剤)

 

以前は経口投与がほとんどでした。特に結合型エストロゲンのプレマリンが広く使われていました。

 

よく効く薬ですが、長年の使用によって血栓症のリスクが高くなるという問題があります。 これは、経口薬は肝臓で分解されることを考慮して多量に服用する必要があるからです。

 

この副作用を解決するために経皮薬が開発されました。 皮膚から吸収された薬はそのまま血管に入り全身をめぐります。肝臓で分解されないので経口薬より少量で同じ効果が期待できるのです。

 

今は経口薬も少量投与が推奨されて、血栓症などの副作用も出にくくなっています。

 

経皮薬はパッチ剤とゲルがあります。どちらも効果は同じですが使い勝手が違うので自分に合った方法を選びましょう。

 

パッチ剤はアルコールを含むため、肌の敏感な人はかぶれてしまうこともあります。その場合はゲルで様子をみることがあります。

 

一般的に使われるエストロゲン剤と商品名

 

HRTで使われる女性ホルモン剤にはいくつか種類があり、また製薬メーカーによって商品名が異なるため分かりづらいですね。ここでは、主な有効成分と製品名を紹介します。

 

経口製剤

商品名 有効成分 備考
プレマリン 結合型エストロゲン E1製剤
ジュリナ エストラジオール E2製剤
エストリール エストリオール E3製剤
ウェールナラ エストラジオール+レボノルゲストレル 配合剤

 

経皮製剤

商品名 有効成分 備考
エストラーナ エストラジオール パッチ剤(貼り薬)
ディビゲル エストラジオール ゲル(塗り薬)
メノエイドコンビパッチ エストラジオール+酢酸ノルエチステロン パッチ剤(貼り薬)
ル・エストロジェル エストラジオール ゲル(塗り薬)

 

 

黄体ホルモン剤について

 

宮内膜増殖作用を抑える目的で使用される黄体ホルモン剤についても紹介しておきますね。

 

現在はエストロゲン剤との配合剤があるので、HRTでは主にそちらが主流です。

 

黄体ホルモン製剤-プロベラ・ヒスロン・ディファストンなど。 このほか、萎縮性膣炎の治療にエストリオールの膣剤もあります。

 

上手に使い分けよう!HRTの投与方法は4タイプ

 

では、どのように薬を使っていくのでしょう?基本的には周期的に服用する方法と継続して服用するがあります。

 

周期型にも2タイプ、継続型には使う薬によって2タイプあります。

 

(1)周期型

エストロゲンを連続して飲み、12~14日黄体ホルモンを服用する方法。パッチ剤の場合は連続して貼ることになります。

 

月経周期を作るわけですね。この方法では、黄体ホルモン剤を飲み終わる頃に出血がみられることがありますが、次第に減っていきます。

 

 

(2)休薬期間を設けた周期型

 

(1)の方法に黄体ホルモン剤を飲み終わった後、1週間程度の休薬期間を設ける方法です。こちらの方がより自然な月経周期に近くなります。

 

上記ふたつの周期型投与方法は、閉経前後の女性に向いています。ただ、(2)の場合は休薬期間に更年期の症状がつらいという人もいます。その場合は(1)で様子を見ます。

 
(3)2剤継続型
 

エストロゲン剤と黄体ホルモン剤を連続して服用します。今は合剤があるのでこちらを使うお医者さんが多いです。この方法では、定期的な出血はありませんが、不定期な出血はあります。しかし、これも次第に少なくなっていきます。

 

(4)エストロゲン単独投与型

 

エストロゲンだけを連続して服用する方法です。先に述べたように、子宮体ガンの心配のない女性には黄体ホルモン剤は使いません。

 

また、エストリールなどのE3製剤は作用が弱いので、子宮のある人でも用いられることがあります。

 

具体的には、閉経後10年くらい経ってからHRTを始める人や、周期型などで出血を嫌う人、骨粗しょう症の予防などです。

 

 

 

 

HRTはどのくらいで効果が現れる?

 

通常、HRTを行って2~3週間、早い人では1週間ほどで更年期症状が緩和されます。特に、ほてりやのぼせなどの自律神経失調症状に顕著にあらわれます。

 

治療効果をみる目安は、一般に2~3ヶ月から半年と言われています。医師によって多少異なりますが、改善があまりみられない場合は薬を変えたり別の治療をすすめることもあります。

 

HRTで大切なことは医師との十分なコミュニケーション

 

まず、HRTを始めると副作用として体に変化が現れることがあります。乳房が張ったり吐き気がしたりPMS(月経前緊張症)のような症状がでることがあります。

 

生理のような出血をともなうこともあり、びっくりして治療を独断で中止するようなことがないように事前に副作用についてしっかり聞いておきましょう。

 

症状がつらいときは、まずは医師に相談して薬や投与方法を変えてもらってください。

 

HRTで効果がみられないときは?

 

HRTを行ってみたけど、思ったように効果が現れないときもあります。

 

心の不調がメインの場合

 

投与方法や薬の量を変えても治療効果がみられないときは、更年期症状以外の原因が考えられます。不眠やうつ気分などは心身症かもしれません。

 

その場合はHRTでは十分な治療効果は期待できないのです。 ただ、このような場合も更年期の症状と心の症状が絡み合っていることが少なくありません。

 

婦人科でもHRTを受けながら抗うつ剤を処方されるときがあります。

 

漢方薬と併用で効果アップ

 

漢方治療は、西洋医学のHRTと違って足りなくなった女性ホルモンを外から補うのではなく、体のバランスを整えることによって免疫力を上げて症状を改善します。

 

HRTによって出血があるのが嫌だという人も多いです。更年期女性のQOLを考えると見過ごせないデメリットでもありますね。作用の弱いエストロゲンと漢方薬を併用して副作用を抑える治療もあります。

 

治療期間は5年まで?継続する場合とは?

 

HRTの最大の目的は更年期障害の改善です。治療効果があってつらい症状がなくなればいつでも中止してよいのです。

 

やめたことによって症状がぶり返すことがあれば、再度開始することは可能です。 ただ、リスクと得られるメリットを天秤にかけて治療を継続するかやめるかを判断する必要があります。

HRTと乳がんリスク

 

どんな薬でもメリットとデメリットがあります。以前エストロゲン単体でのホルモン治療で問題になった子宮体ガンのリスクは、黄体ホルモン剤との併用投与で解消されました。

 

しかし、乳ガンのリスクに関してはまだはっきりとした結論が出たわけではありません。2~4年ではリスクが上がらないとされていることから、HRTは5年以内が望ましいと言われているのです。

 

また、エストロゲンの単独投与では乳ガンの発症はそれほど上がらないとの報告もあります。

 

骨粗しょう症とHRT

エストロゲンは骨を丈夫に保つ働きがあります。エストロゲンの恩恵を受けられなくなる更年期以降、女性の骨はどんどんスカスカになってしまいます。

 

HRTを受ける際に女性ホルモン値だけでなく生活習慣病などの検査も必要になりますが、その際骨量が低下して骨粗しょう症のリスクが高い場合もあるでしょう。

 

HRTは骨粗しょう症の予防効果があることがわかっています。更年期障害が改善されても骨粗しょう症予防のために継続することもHRTのメリットのひとつです。

 

その場合はエストリオール(もっとも弱いエストロゲン製剤)を長期にわたって使うこともあります。

 

HRTの投与期間をまとめると、

  • 治療効果が出て満足したら中止して良い
  • 一般的には2~3年、5年以内が望ましい
  • エストリオール単体で骨粗しょう症予防目的で長期投与もある

 

まとめ

 

HRTは更年期障害に高い効果を発揮しますが、リスクがあることも忘れてはいけません。事前にしっかりメリットとデメリットの説明を受けましょう。

 

また治療を始めてからも定期健診をしっかり受けることはもちろん、医師と十分相談しながら納得して治療を受けることがとても大切です。

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