高齢になれば誰でも病気のリスクは高くなっていきます。ただ、女性の場合は閉経によってエストロゲンの恩恵がなくなり、そのリスクはぐーんと高くなっていくのです。
今回はエストロゲンの役割と、更年期以降に気をつけたい病気について紹介します。
エストロゲンの働きは女性の一生に深く関わっている
女性ホルモンのエストロゲンは性成熟期を過ぎると急激に減少していきます。閉経によって卵巣からの分泌が完全になくなります。
やがてその状態に体は慣れていきますが、それまでに体にさまざまな不調が出てくるのです。 更年期とは女性の体が大きく変化する移行期。体や心理面でそれまでと違う不調が出て当たり前と言えるのです。
エストロゲンによって女性はさまざまな恩恵を受けてきました。エストロゲンの働きと女性の体との関係を知るとその有り難さがよく理解できます。
閉経によってエストロゲンはごくわずかな状態となり、その恩恵が受けられなくなってしまいます。
閉経後の更年期後期から老年期(円熟期の方が良いですね)の女性が健康を維持して生活していくためにも、女性ホルモンについて理解を深めておくことは大事です。
まず、女性の一生をエストロゲンの分泌量に主眼をおいて見ていきましょう。なんとなくわかっていることでも、再確認することで自分の体に起こっていた、または起こっている変化を素直に受け入れることができます。
女性の体に深く関係するエストロゲンの分泌量
卵巣からのエストロゲンの分泌は、初潮を迎える頃から始まります。閉経によって分泌はなくなりますが、ライフステージによって変化するエストロゲンの分泌量は女性の体に大きな影響を与えます。
思春期(8歳~18歳頃)
初潮を迎える頃に卵巣でエストロゲンが作られ始めます。初潮開始からしばらくは、卵巣の機能も未熟なので、月経周期も乱れがちで月経期間も長かったり短かったりと安定しません。
子宮もまだ未熟なので月経痛に悩まされることも多い年代です。数年経ちエストロゲンの分泌も安定して月経も落ち着き、卵巣や子宮の働きも成熟するまでの期間が思春期です。
性成熟期(19歳~40代半ば)
エストロゲンの分泌が安定し、月経周期も整ってきます。ちなみに、月経周期の正常な日数は25日~38日。24日以下の短い周期を頻発月経、39日以上あくことを稀発月経といいます。
性成熟期の前半は、体が妊娠出産にもっとも適した年代です。 早い人で35歳、遅い人でも40代になると徐々に卵巣機能は低下していきます。
エストロゲンの分泌も減少し始め、それまでエストロゲンの作用によって守られていた病気のリスクが上がっていきます。
更年期(閉経前後10年間:45歳~55歳頃)
閉経をはさんだ前後10年間が更年期です。一般的に45歳~55歳頃とされていますが、閉経年齢が人によって異なるので、早い人では30代後半、遅い人では60代で更年期を迎える人もいます。
この時期はエストロゲンが急激に減少します。その変化に体が付いていけずにさまざまな不調があらわれてきます。
老年期(円熟期)
更年期後、エストロゲンがほんのわずかしかない状態に体が慣れていきますが、それまでエストロゲンの作用によってガードされてきたさまざまな病気のリスクが高まっていきます。
特に骨量の低下は著しく、骨粗しょう症になる女性は70代以上では2人に1人と言われています。
女性の体を守ってきたエストロゲンの働きとは?
女性ホルモンの働きは女性らしい体を作ったり、妊娠出産など生殖機能だけではありません。あんがい知られていない女性ホルモン、特にエストロゲンの偉大な働きを詳しく見ていきましょう。
- 肌をきれいに保つ
- 髪を艶やかにする
- 骨を丈夫なまま保つ
- 血管を丈夫に保つ
- 脳の働きを活発にする
- 精神を安定させる
- 脂質の代謝をコントロールする
女性の肌は男性に比べて潤いがありますね。きめ細やかな肌や艶のある髪もエストロゲンのおかげです。
さらに、血管を丈夫に保ったり脂質の代謝にも関わっていて、同年代の男性に比べて高血圧や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病のリスクも軽減されているのです。
エストロゲンの恩恵がなくなると?
エストロゲンは女性の体を病気のリスクから守ってきました。閉経後、その恩恵がなくなるとどんな病気のリスクが高くなってくるのか知っておきましょう。
まずは一番注意するべきは骨粗しょう症です。
これについては別記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。
次に動脈硬化!動脈硬化を引き起こす原因となる病気と、動脈硬化から引き起こされる病気を分けて列記しておきます。
動脈硬化を引き起こす病気
- 脂質異常症
- メタボリックシンドローム
- 高血圧症
- 糖尿病
動脈硬化から引き起こされる病気
- 狭心症・心筋梗塞
- 脳梗塞・脳出血
- 下肢閉塞性動脈硬化症
- 腸間膜動脈閉塞症
女性特有のガンにも気をつけましょう
卵巣がん・子宮体がん・子宮頸がん
子宮頸がんは20代~30代が多いのは確かですが、60代で罹患したという例もあります。決してリスクはゼロではありません。
また、更年期以降はエストロゲンの減少によって萎縮性腟炎を起こしたり、尿失禁や頻尿といった症状も起こりやすくなります。
まとめ
更年期に差し掛かると頭を掠める「閉経」。ただ生理がなくなるというだけでなく、女性の体には様々な変化が訪れます。それも良くない方に!
残念なことに、これは自然の摂理なので避けることはできません。でも、自分の体がどう変化するのか、どんなリスクが高まるのかを知っておくことが大切です。
改めて体の変化に向き合い、更年期以降の人生を実りあるものにしていきたいですね。